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英語・英文学を中心に、言語や文学と関連して考えたり思いついたりしたことを書いていきます。
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2012/02/27 (Mon)
少し難しい英単語に、albeitという語がある。「たとえ~でも」の意の接続詞である。拙著『英語のルーツ』の中に、仮定法現在のことを書いたが、今回の話題はそれと関連した追加情報。
 
albeitの発音は、片仮名で書けば、だいたい「オールビーイット」という感じで(「ビー」にアクセントがある)、このように読めれば、この語の語源は分かったも同然。これは all be it がつながったものである。しかし、なぜ all be it で「たとえ~でも」の意味になるのだろうか。
 
albeit になった all be it は、all (though) it be (that) のカッコ内の言葉が省略された形で、文字通りには「それがまさにそういうことであったとしても」の意である。all は強意の副詞で、「まさに、全く」の意、be はbe動詞の仮定法現在形、it が主語で、省略されている that は補語である。
 
all though ... は、though の強調形で、「本当に~だとしても」等の意を表した。今ではつづまって一語になり、 although となっている。しかも、1400年頃までには all が付いても付かなくてもあまり意味の違いはなくなり、結果として、今ではthough も although も区別なく使われるようになっている。
 
ところで、かつては現在や未来の不確実なことを仮定して述べる場合には、仮定法現在が用いられた。例えば、真偽の定かでない情報があったとして、「その情報がまさにその通りであったとしても…」というような時には、現在における不確実な仮定に基づいて話をすることになり、このような場合、伝統的には仮定法現在が用いられた。
 
all though it be (that) 「それがまさにそういうことであったとしても」も、このような不確実な仮定を表す表現なので、though節内に仮定法現在形 be が用いられているのである。なお、現代英語においては、このような場合、even though that is the case「それがそうであったとしても」のように、現在形を用いる。
 
さて、all (though) it be (that) のカッコ内の言葉を省略すると、all be it ではなく、all it be になるではないかと思われるかもしれないが、ここにもう一つのミソがある。「動詞+主語」の語順になっているのは、接続詞の省略に由来する倒置のためである。

現代英語でも、例えば以下の例のように、接続詞 if を省略すると倒置が起こる。
 
if it were not for ... = were it not for ...「(もし)…がなければ」
If you should have any questions, = Should you have any questions, 「(もし)万一質問があれば」
 
though もかつてはしばしば省略されることがあり、if の場合と同様、接続詞を省略すると、その後の語順は「動詞+主語」となった。したがって、all though it be (that) から though を省略すると、all be it (that) となるのである。
 
こうして、all be it という表現が出来、これが一つにまとまって albeit という語が出来たのである。
 
拙著にも書いたが、仮定法現在は、現代英語では使用される場面が非常に限られており、かつてなら仮定法現在が用いられた所にも、今ではほとんどの場合、現在形や「助動詞+原形」を用いるようになっている。しかし、be it ever so humble「たとえどんなに貧しくとも」、if need be 「必要とあらば」等、決まり文句的に使われる表現には、古い言葉遣いが化石のように留められていることがある。
 
albeitの中のbeは最早動詞でもなく、単語の一部になってしまっているが、これもかつての仮定法現在の「化石」であると言える。
 
なお、仮定法現在を使う場面は非常に限られて来ており、現在これを使うのは、(祈願文を除けば)主にアメリカ英語において、ある特定の構文(表現)を用いる時のみだと拙著にも書いたが、これについても、最後に多少補足説明をしたい。
 
かつて仮定法現在がまだ広く使われた時代に比べると、現代英語で仮定法現在を使う場面が非常に限られているということは疑いようがない事実である。しかし、ある意味で、仮定法現在は、近年その力を少し盛り返してきているとも言える。
 
アメリカの政治的、文化的影響力のため、アメリカ英語がイギリス英語に影響を与えるということが起きるようになっているが、その一つの例として、アメリカ英語に倣い、イギリスでも仮定法現在が再び使われるようになって来ているという。

It is desirable that everyone attend the meeting.
② It is desirable that everyone should attend the meeting.
 
①では仮定法現在(下線部)が用いられており、これはアメリカ英語でよく用いられる形。一方、②の方は助動詞付きの should attend という形(仮想叙想法)が用いられており、こちらはイギリス英語でよく用いられる形。
 
従来はこのような傾向がかなりはっきりしていたようだが、近年では、アメリカ英語の影響により、イギリスでも①を使う人が増えて来ているようだ。アメリカ英語の影響で、イギリス英語における仮定法現在の使用が「復活」したというわけである。
 
イギリスで廃れた言葉遣いが、廃れる前にアメリカに伝わり、そこで使い続けられ、後にこれがイギリスに逆輸入されて再び使われるようになるということは、比較的よくあることで、この他にも例はある。それらについても、いずれまたそのうち扱いたい。
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中世英語英文学や英語史を専門とし、駒澤大学文学部で教えています。さらに詳しくは、ホームページをご覧ください。
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