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英語・英文学を中心に、言語や文学と関連して考えたり思いついたりしたことを書いていきます。
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2012/02/08 (Wed)
前回、日本における言霊信仰やそれに関連した忌み言葉について少し見たが、英語にもある種の忌み言葉がある。ただし、日本語の場合とは少し感覚が違うようである。英語の場合、言霊信仰と関連するというよりは、口にするのも畏れ多い言葉をあまり使わないようにする工夫から生まれたものが多い。

畏れ多い言葉とは、特に神と関連する語彙である。旧約聖書の「出エジプト記」20章7節には、「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない」(新共同訳)、とあるように、畏れ多い神の名を軽々しく口にするのをはばかるという伝統が古くからあった。そのため、例えば、Oh, God ! という代わりに Oh, gosh ! と言ったり、Oh, my God ! という代わりに Oh, my goodness ! と言ったりするのである。

他にも God を gosh や goodness で置き換えた表現は多くある。以下はその一例。

Thank goodness. (= Thank God. 「ありがたい、よかった」)
in the name of goodness (= in the name of God 「神に誓って」)
for goodness's sake = for gosh sake (= for God's sake 「神に誓って」)
Goodness knows what will happen tomorrow. (= God knows what will happen tomorrow. 「明日何が起こるかは神のみぞ知る」)

別れの挨拶として用いる Good-bye が出来た背後にも、これと似たようなプロセスがあったかもしれない。Good-bye は、God be with ye ! 「神があなたと共にありますように」という祈願文に由来し、これがつづまり、Godbwye等を経て、最終的に Good-bye となったものである。

God が good に置き換えられた一つの要因として、good night 等の挨拶表現との類推があったとも考えられる。しかし、それと並行したもう一つの要因として、上記のような理由から、Godという語の使用を控えるために、音や綴りが似ており、意味的にも通ずるところのある good で代用するということが行われたとも考えられそうである。

この他、言い換えで済ますのではなく、神を表す語をそっくり省略するということも行われてきた。例えば、God damn it ! 「神がそれを断罪されますように、ちくしょう」の代わりに、Damn it ! と言ったり、God bless you ! 「神の御加護がありますように」を Bless you ! と言ったり、といった具合である。なお、Damn it ! の damn も「神が永遠の断罪をする、地獄に落とす」など、畏れ多く強烈な言葉なので、Done it ! と、さらに別の言葉に言い換えた表現もある。同様の理由から、damn は d― や d―n などと綴られることもある。

今は廃れて使われなくなったが、例えばシェイクスピアの作品にも使われている 'sblood (= God's blood)、zounds (=God's wounds)、'sdeath (= God's death)(いずれも「ちくしょう、なんてこった」等の意) のように、God は略すが所有格の 's は残したものもある。

さて、上記のように、旧約聖書には神の名をみだりに唱えることを禁じた一節がある。そのため、ユダヤ人の間では、神の名を呼ぶことがタブーとされた。そして、神の名が長いこと口にされないでいたために、ついには神の名の正しい発音が誰にも分からなくなってしまった。分かっているのは、YHWH という子音のみで、これにどのような母音をつけるべきかは誰にも分からなくなってしまったのだ(ヘブライ語の文字は子音のみで母音は綴られない)。戒律が厳しすぎて、思いもよらない結果となり、神もびっくりしたかもしれない。


 
  
 
 
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中世英語英文学や英語史を専門とし、駒澤大学文学部で教えています。さらに詳しくは、ホームページをご覧ください。
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